猫の日本画はご存知のように非常に多く描かれていますが、特に歌川国芳と歌川広重が目立つと思います。
そんな中、今回は国芳の猫作品である「絵鏡台合かゞ身(えきょうだいあわせかがみ)」の3つ、猫しゝ・みゝづく・はんにやあめんの内の「はんにやあめん」にフォーカスした作品をご紹介します。
「絵鏡台合かゞ身」は、当時庶民の間ではやっていた影絵遊び(手や腕を使って障子に動物などに見える影を作る)を浮世絵に取り入れた絵画です。
その中の「はんにやあめん」を立体的に表現し、帯飾り用の根付けとして開発されました。
歌川国芳の「はんにやあめん」のユニークで可愛い根付け帯飾り
絵鏡台合かゞ身の「はんにやあめん」は、般若面の影絵を作る猫を表現したユニークな絵画です。
絵鏡台合かゞ身は裏面と表面の2枚セットで販売されたもので、猫しゝ(ねこ獅子)、みゝづく(ミミズク)、はんにやあめん(般若面だけど「にゃあ」とする事で猫とかけている)の3つの影絵を作る猫と、影絵版が用意されました。
本帯飾り根付けはこの3つのうち「はんにやあめん」を立体化し、裏(猫)と表(影絵)を用意、2つがチェーンで結ばれています。
影絵部分を帯に差し込む事で般若面を作る猫を帯飾りとして楽しむ事が出来ます。
歌川国芳と歌川広重の関係
歌川国芳と歌川広重は日本を代表する絵師で、2人とも猫の絵で有名ですよね。
苗字も同じ「歌川」だし、もしかして兄弟だったり?なんて事を考えたことがある方も少なくないのでは。
結論から申しますと、この2人は兄弟ではありませんし、「歌川」も苗字ではないのです。
最大勢力だった歌川派
歌川派は、歌川豊春に門下に入り、それぞれが歌川の性を受け、ハンドルネームで浮世絵師として活躍、次々と広がり大きな勢力となっていきます。
葛飾北斎派たちの活躍が終息した後、浮世絵界を独占する一大勢力を築いた最大派閥の浮世絵師団が「歌川派」なんですね。
そういうわけで歌川国芳も歌川広重も歌川派なのですが、実は師匠が異なります。
歌川国芳は始祖である歌川豊春の弟子、歌川豊国に弟子入りしましたが、歌川広重は豊国に門徒満員で弟子入りを断られた為、歌川豊広に弟子入りし、その後に「広」の1時と歌川の名を貰い歌川広重と名乗って活動したのです。
歌川広重の師匠の歌川豊広と、歌川国芳の師匠の歌川豊国は2人とも始祖である歌川豊春の弟子です。
つまり、国芳と広重は師匠は違えど、師匠の師匠は同じ、という事になりますね。
この「はんにやあめん」のユニークで可愛い根付け帯飾りは猫の部分もしっかり般若面の形をしています。
猫の裏を見て見ると影絵部分の般若と同じ形なのが分かると思います。
国芳の画力と想像力、発想力を根付けという形で実感できる、ユニークでお洒落でアートなアクセサリーですね。